川村ケン氏の最も大切にしている愛器、minimoogです。 by Eiji Farner ≪ moog ≫ まず、今さらですが。 「モーグ」です。 シンセサイザーの父と呼ばれる偉大なるMoog博士の名前から、そのブランドネームは付いたのですから、モーグ博士にしてみれば 「日本のみなさん、こんにちは。私の名前はムーグじゃない!」と。 お気持ちは察するに余りあります。 「日本のキーボーディスト、ケン・カワソンです!」と訓読みで間違ってアナウンスしてしまったら! そりゃもう、日本のファンも、川村さんのお母さんもガッカリでしょ。 あう。冒頭から逸れた。すみません話をもどします。 ミニムーグって。小さい夢具!ね。ちょっとコーフンしますでしょ ※実際のミニモーグはどんな音でも出せるワケではなかったけれど、その後進化したシンセサイザーは実際そうなっていきました。 なのでムーグという響きには日本的な勝手な思い込みというか、イメージがあったと思うんですが、正しくはモーグです。 すなわち、川村ケンと書いて、ケン・カワムラであるがごとし。 さて、そんな妄具に溢れた少年・川村ケンの夢が叶った写真をご覧ください。 どーです。 こんなにも嬉しくってタマラナイ〜って顔した素敵な未来が待っていることを、タイムマシンに乗って行って少年・川村ケンに教えてあげたいっ。 この内のI台が少年・川村ケンの人生にミニモーグを植え込んだと言っても過言ではない、厚見玲衣さんのミニモーグです。 少年・川村ケンが聴きまくったVOW WOWのアルバムで実際に厚見さんがプレイした“記憶の音”のミニモーグ。 そして、その他のIII台はミニモグマニアック友達のTさんが持ち込んだII台と、厚見さん御友人からお借りしたI台です。
≪VOW WOW≫ もしコレを読んでくださっている貴方が、我々と同じように人生を変えられちゃってもいいなら。
まだまだお薦めすべき曲は山ほどあるのですが。 ちなみに、上から3曲は、高校生・川村ケンの目覚ましソングです。 いまだに夢から覚めてませんがねぇ。(そこがいーんだけど)
サテ。ミニモーグの説明に参りましょう。 ナニブン素人の説明ですから、「いまさら説明されるまでもなく、シンセのことなら何でも知ってるぜ。」という方や、すでにこのクドイ文章に食傷気味の方、全く楽器に興味が無いのに読み始めてしまった方(笑)は、クルクルってスクロールして写真だけ見てもらうんでいーですよ。 前述の、少年・川村ケン記憶の音=VOW WOW楽曲の伝説のキーボードソロを始めて聴いて頂いた方には、ちょっと信じられないでしょうが、このミニモーグは和音が弾けないのです。 では、川村先生、詳しくお願いします。
はい、そこっ。 見た目が鍵盤楽器なので、ピアノのイメージでドミソって和音を弾いたり、左手でベースラインを弾きながら右手でメロディを弾いたり、そうやって弾くイメージがありますが、ミニモーグは単音しか出ないのでピアノ経験者が初めて触ると「なんだこりゃ」となるハズです。 単に技術的に昔は単音しか出せなかった。と、実はボクも昔はそう思っていたのですが、前述のVOW WOWの曲を聴くとその考えは浅はかで稚拙であったことを再認識させられます。 だってトランペットやバイオリンも単音楽器でしょ。 「小さな妄具」の説明で、コメ印つけておいたセリフは、そーゆーことなのです。 「現代の進化した最新型のシンセサイザーがミニモーグの音を今もって超えられていない」 という、圧倒的な魅力ある音色を備えているのがミニモーグなのです。 これらはまさに天才発明家の生み出した楽器であり、その後の地球の歴史や音楽という文化までをも変えてしまった楽器だとボクは思っています。
≪モーグ博士≫ 天才と称されるモーグ博士の天才たる所以について、これまたボクの勝手な想い入れを語らせて頂きます。 ちょっと前置きです。皆さんは全ての楽器に共通する「音の原理」って考えたことあります? 特殊な例外を除けば、打楽器というのは皮が反響するための「胴」があって、その胴が共鳴して音のキャラクターが決まる構造です。 楽器っていうのは共鳴する本体構造が音色を大きく左右するワケですね。 弦楽器は弦の長さや張り具合で音程を決めやすいし、弦の数が多ければ和音も弾けますので、ちょっとエライ感じがします。 で。音楽をより大きな音量で聴衆へ伝える手段として、電気回路による増幅装置=いわゆるアンプ(Amplifire) という物が発明・進化して、現代音楽の主流となるエレキ楽器(この言い方も昭和かっ) へと変貌していくワケですが、ようするに最初は全て、マイクで拾っていたんですよね。楽器サウンドという名前の「空気の振動」を。 ちょっと変わったトコロでは、オルガンという楽器があります。 見た目はピアノのようなイメージですが、ピアノは鍵盤のついた弦楽器。オルガンは鍵盤のついた管楽器のイメージですね。
天才と呼ばれる発明家が作り出した、フェンダーエレキベースも、ハモンドオルガンも、誰も思いつかない構造と発想によって巨大な楽器をコンパクト化(異議受け付けてましぇ〜ん)に成功し、その後の音楽という文化のあり方までをも変えてしまいました。 サテ。ここまで読んで、そろそろモーグ博士の偉大さに気付いた方が居るかもしれません。(笑) モーグ博士の考え出したシンセサイザーという楽器は、「どこにも空気を振動させる“発音構造”が無い」のです。 ですが、まぎれもなく。 まるで断末魔の女性の悲鳴のようなカナキリ音〜大地を揺るがすような怒涛の重低音。その全てが太く、厚みがあり、力強く、美しいのです。
ではミニモーグの音源は何なのか。いったいどうやってそんな音を作り出しているのか。。。って、誰もが知っていますね。ハイ。電子音=発信器です。 モーグ博士より前に、電子音で音楽を奏でようという発想は、テルミン博士の発明した「テルミン」という楽器が存在し、それが地球の歴史上最初の電子楽器だったという事は有名です。
アンテナに手のひらを近づけると、ウィイイイーンって鳴る楽器です。 鍵盤を押せば、ドレミファソラシドって、誰でも弾ける! モーグ博士の偉業は、まさしく地球の歴史を変える大事件だったワケです。 昔々、一番最初に市販されたシンセサイザーが、一番凄い音じゃった。。。と、後世の子供達に語り継がれていくべきなのです! では、先生。ひとこと、どうぞっ。
先生っ、おっしゃってる事は大変参考になったんですが、比喩が極端すぎます。
ナールホド。 はい、そこ。笑わないっ!(笑)
≪modular ≫ ミニモーグが世界初のシンセじゃねーだろ。という声も聞こえてきそうなので、(笑) だけどボク達、“普通” じゃない友達が居るんです。(笑) これは、川村ケン氏の愛器、モディファイド・ハモンドオルガンC3 “海月” を作りあげたヴォイジャーさん所有のモジュラーモーグという“地球の文化遺産”です。 のに!(爆)メイニアックスの発する「欲しいな、欲しいな〜」という8文字の “念波” の凄まじさを、またしても我々は目の当たりにする事になりました。 し・か・も。そのタイミングたるや。
蕎麦屋の出前じゃないんだから。(笑) 今、出ました。って。 「着いてから、驚かそうとしてたのに、そちらからモーグの話題で連絡もらってビックリです!」 だって。 こっちのほーが100倍ビックリしてるし、着く前でも着いてからでも、どっちも充分ビックリするっつーの。(笑) そして。 もうね、どこかに脚本書いている神様が居て、笑いながら見守られているみたいです。 このモジュラーモーグ。 ここにもまた強烈なモーグ菌熱病に犯された重症患者・モーグメイニアックスが居らして、川村ケン氏と一緒にドップリ妄想に漬かっているという、素敵といえば素敵。目を覆いたくなるような惨状といえば讃状が繰り広げられているワケです。(笑) もっと見たいでしょ。 どぞっ。
我々はミニモーグを「みにもぐ」って呼ぶので、てっきりモジュラーモーグは「もじゅもぐ」って呼ぶのかと思いきや、箪笥みたいなんで「たんす」って呼ぶんだそう。(笑) ちなみに「たんす」と「みにもぐ」は同じ音ではありません。 大人になっても、あの日のまま。。。V台のミニモグをV字に並べて添い寝しちゃって。 あの日のボク達は、こんな素敵な未来が待っているなんて知らないんだけど、ひとたびそのサウンドを浴びれば、いつでもあの日に連れて行ってくれて再会させてくれる。 ほーら。だんだんモーグに詳しくなってきたぞ。ムフ。 いつでも。 ね。 と、その前に。 先生が走ってきました。
はい、着席。 |
≪ 小型妄具 ≫「たんす」を小型化して、現代のシンセサイザーの主流デザインとなるアノ形にしたっていうのも、ミニモーグのタマラナイ魅力です。 デザインもカッコイイ! コントロールパネル部分が起き上がるんですよね。このトーリ。 で、寝かせば、このトーリ。 じゃなくて、コレ。
立ってヨシ。寝てヨシ。。。 「ロックキーボーディストは立てるべし。」
モーグ博士も、寝かすと見えなくなっちゃうココにサインを書いているので、
これも厚見玲衣氏のミニモーグに書かれたサインなのですが、ご自分のサインに、“念波” のイラストを、ほにょにょ〜って書き加えるトコが、博士のファンキーさと天才・奇才たる所以を雄弁に物語っている素敵なサインです。 ならば。 どなたのサインが書いてあるかは、みなさん既にお分かりでしょう。 冒頭に記した「川村ケン氏が最も大切にしている愛器」たる所以。。。 ここまで読んでくださった貴方と、それを“共有”できる幸福感に包まれつつ、一緒に。。。じーん。 サテ。どんどん欲しくなるミニモーグのスペックについて。 アレ?文章のチューニングがズレた。(笑) で。 鍵盤を押せば、ドレミファソラシドって音階が簡単に弾ける。とも書きました。これも注釈つき。というかちょっとウソです。 実は。。。チューニングが狂うんですよ。(笑) まあ、ピアノもギターも弦が緩めばチューニングは狂うワケですから、そんなに驚くことではないんですがね。 おふたり、おそろいのチューナー。(笑) 最近、新型のチューナーに買い換えられてしまい、「ああ、おそろいじゃなくなっちゃったっ。新型、良さそうですね、替えようかな。」と、まあ、今もメロメロなワケです。 おっと、またしても。 しょっちゅうメロメロ狂う。(笑) 極端に言うと、一曲弾いたら、狂う。 ( ←機嫌にもよるらしい ) なので、チューニングは常に直しながら弾く。 ならば。空調の効いた部屋で、そーっと弾けばいい。って考える人もいるだろうけど、前述のVOW WOW の曲では、その調整ツマミをグニャグニャ回して、まるで狂うことを楽しむかのように、突拍子もない音程にして弾きまくっています。 人間の声や、ポジションの線引き(フレット)が無いバイオリンのような楽器であれば、半音と半音の中間となる音程を表現したり、半音と半音を滑らかにつないで変化させることができますが、鍵盤楽器とは、半音階と半音階の中間の音程は存在しないモンなのです。 更にモーグ博士の凄いところは、音程を変化させるのに便利なツマミが付けたことです。
外側が、「ピッチベンド・ホイール」 鍵盤側が、「モジュレーション・ホイール」 です。 これを回せば、音程が上下する。 2ツあるホイールは、それぞれ利き具合が異なります。 鍵盤側の、「モジュレーション・ホイール」 は、ちょっとホイールを押し上げるだけで、簡単にヴァイブラートをかけることが出来る便利なホイールです。ですから当然、大多数の人がこっちでやっています。 「それじゃ人間的じゃない。魂がこもらない。」 なんと厚見玲衣氏は、ヴァイブラート時の音程のコントロールが非常に難しい、外側の 「ピッチベンド・ホイール」 を使って、ヴァイブラートをかけるのです。 「あの天使がすすり泣く声のような、悪魔が喜び歌う声のようなヴァイブラート。。。 でるな、ここ。(笑) 穴埋め問題。 「○○が泣いて、○○が喜ぶ。厚見さんが○○○です。」 ああっ、間違えて埋めそうっ。(爆) 単音楽器のミニモーグは右手で弾いて、左手は遊んでいるのか。っていうと、川村ケン氏も厚見玲衣氏も、左手は必ず、このホイールをワシ掴みにしていて、ホイールを操作するというより、まるで本体ごと揺さぶるかのようにホイールに力を込めて音程をウネらせ、ひとつひとつの音に表情をつけています。 両氏の愛器のホイールには、より表現力を豊かにするための秘密のモデファイがされているのは、 あ。 (汗っ) そして前述のチューニング調整ツマミをグニャグニャ回せば、ヴァイブラートホイールでの音程の上下幅を遥かに越えたトンデモナク低い音程から超ウルトラ高い音程まで一瞬で「なめらかにつなぐ」ことができるのです。 がっ。調子に乗ってグニョグニョやると問題もあります。 川村ケン氏がステージ上で、ミニモーグ弾くシーンが近づくと、こっそりチューニングを直している姿に気付いていた貴方! なんだ、そりゃ。不便すぎんだろ。と思うでしょ。 「そこがいーんだよ!」 だ、そーです。(笑) ナゼナラ。 そうして、貴方も我々メイニアックス(プチ○○)の同志となってゆくのです。(笑)
≪ Butterfly Effect ≫川村ケン氏が、愛するミニモーグ。 楽器概念でいう「空気を揺らす音源」がどこにも存在しないこの楽器は、アーティストの情念に共鳴して発振し、我々の内なるモノに直接入り込んで感情を揺さぶるという、これぞ20世紀最大の発明、最高の楽器だとボクは思っています。 便利さだけを求めるヌルい奏者にはただの使いにくい古いシンセでしかないかもしれない。 では、我々“普通”の音楽愛好家には、ミニモーグの世界観を体験できないのかといえば、これを読んでくださっている皆さん察しのトーリ、川村ケン氏が。ボク達のために弾いてくれます。 どんなにたくさんの楽器が鳴っていても、どれほど爆音のバンド演奏の中であっても、ひときわ突き抜けて響き、聴衆に届くその圧倒的なサウンドをひとたび浴びれば、これを最後まで読んでくださった皆さんおひとりおひとりと、それぞれにお会いしたことはなくても、一瞬で皆が同じ景色を見ている感覚になれるハズです。 そして、モーグが“夢具”だったアノ時代まで、一緒に時間を飛び超えることができると確信しています。 是非、川村ケン氏のライヴに足を運んでみてください。 その日のステージ上に、もしミニモーグを見つけたならば、その凄まじき楽器に向かう直前の、神聖なる儀式の瞬間を見逃さないでください。 川村ケン氏の指先が「小さな妄具」の鍵盤に溶け入り、“猛具” となって雄叫びを上げる瞬間を一緒に共有して欲しいのです!
最後はやっぱり、この一枚。 あ。いけね。 散々煽っておきながら、30年以上前に生産中止になってまして、もう売ってないんでした。 さ。貴方も来ますか!?
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「著書・緑ちゃん(「思い通りに作曲が出来る本」)の付属CDの中で弾いているソロは (キーワード:「ナインス」「ペンタトニック」そして、ずばり「シンセソロ」)
あるじゃん。ねえ。(笑) |
ちなみに、ボクのお勧めは、2010年5月に開催された厚見玲衣さん主催の「ゴールデン・メイニアックスの奇蹟」のDVDで見れるジェフベック・セッションで川村ケン氏が弾きまくったミニモグ・ソロの全て。(まじですごいよ!)
なぁんだよ。こんだけ書いて、最後は本とDVDの宣伝かっ。(笑)
ではー。
written by Eiji Farner
これだけ読んでも、まだ食べ足りない方は、
伝説の「静岡のソロ」に関して綴ったブログは、コチラ。
2010年07月14日「いまさらなんですが。」
http://blog.goo.ne.jp/kenbow_001/e/a050a2227a770d143ef98176ff3a22f9
川村ケン氏がミニモーグを手に入れた時の、そりゃーもう大興奮のエピソードをちょっとだけ綴ったブログは、
コチラ。
2010年01月20日「To be a Rock .」
http://blog.goo.ne.jp/kenbow_001/e/e39199d574b09a3d3f2246dbf35dedeb
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