[ 第 V 章 Mask of Flesh ] 第 5 章は、“海月”製作日記です。 これが、あのクラゲ姿になるワケですが、時系列を順に辿って完成までの道のりを説明していきます。 前述の経緯で、「ようし、C3を買って、透明化するぞ!」と決意した川村ケンさんですが、 なぜなら、Hammond社は、川村さんが「買うぞ」と思い立った日から30年以上も前に、すでにC3オルガンの生産を止めてしまっているからです。
4本足がB3で、教会風デザインがC3です。B3だと女性が座って弾くときに前から見てスカートの中が見えちゃうというか、ベース用足鍵盤を踏む足サバキが目を引いてしまい、エレガントさに欠けるという理由で、このように教会風の箱型モデルも発売した。らしいです。(又聞き) 脈々と、その血は受け継がれているワケです。 ちょっと待った。中身を取り出して、透明のオリジナルデザインケースに入れ替えちゃうのに、なんで“C3”にコダワル必要があるんだ。と、思ってしまった方。 残〜念っ、失格です。 で。この日本にも、探せば “C3” は勿論あるにはアルのですが。。。。 実は、玄関が入るか、廊下を通るか、床が抜けないか。という問題よりも、とんでもなく値段が高いとう事のほうが。 もしホンの2年前のレート(1ドル=120円くらい)だったなら、仮に5000ドルの買い物をすれば、日本円に換算すれば約60万円の支払いだったのですが、これが1ドル=80円トナレバ、支払額は約40万円!と、超・お買い得価格になるワケです。補助金もエコポイントも要りません。 まさにっ。今が買い時、ハモンドオルガン!(←ウソです。次に出てくる写真を見てから考えましょう。) テナ感じで。最初の障壁となる「捜索」「品定め」「購入」「お支払い」までを こ・れ・で・す。
輸入です。個人輸入。 自分が持ち上げているんじゃないのに、こうして見ているだけでドッと疲れが襲ってきます。 これを荷受けできるご家庭など、ありゃしませんよ。 この木箱を輸入手続きして、トラックやらクレーン重機やらの手配をして、ヴォイジャーさんの作業場(なんと建物の2階!)に運び込むだけで、ボクならば今年の作業はこれで終了です。 なのにっ。 すぐに、木箱から出して、この美しい勇姿を撮影されて、「無事、到着しました〜」ってメールしてくるヴォイジャーさんって。。。。 恐るべし、めくるめくオルガンオタクの世界っ! これだけでも、20kgくらいあります。 せっかくすぐに出してくれたので、すぐに見ていきましょう。
ウットリ。。。。 なのにっ!
恐らく Hammond C3 を容赦なく分解する写真など、一生見ないで済むのが普通の人生です。(笑) いやいやいやいや、これほどに素晴らしいヴィンテージ楽器は、 と思った方。居ますよね。実はボクもそう思いましたよっ。。。。でも。。。。
容赦なく“海月”の完成へと突き進む覚悟のできた方だけ。駒を進めましょう。 ここからは いよいよ川村さんの夢の中に居た“海月”が、実在の楽器となって現世に登場する過程をご覧頂きます。 こ・れ・が、“海月”の、いちばん最初の、“幻”の、デザイン・デッサン画です。 いや〜ん、川村ちゃん、絵、へた〜。(爆) つーか。 このマンガ(←デッサン画という言葉をすでに封印)から、 で、このマンガが、ヴォイジャーさんの手にかかると、こうなります。 おおーっ、川村ちゃんのマンガが、いよいよ“海月”らしくなってきました。(笑)
「ですからー(笑)、あれはWindows付属のペイントという簡易ソフトで、“マウスで!”、描いたものです。しかも3分くらいで。だから、あの程度の・・・誰だってマウスなら、あんなものでは・・・ゴニョゴニョ。」 by 川村ケン ↑ 先へ進みましょう。(うひひ) ここで、前述のGRAND FUNK クラゲハモンドと、この“海月”が似て異なる物であることに気付いた貴方は、真性のオタクです。 川村画伯こだわりのデザインは、この横から見たシルエットです。 「C3 も B3 も、サイドパネルが木の板なので、オルガンをステージ上に横向きに置いても鍵盤を弾く指がサイドパネルでお客さんから見えないよね。 という、川村さんの“想い”は、やがて、 「巨大な心臓部を鍵盤の下から鍵盤の後ろに変更すれば、奥行きは増えるけど、上に他のキーボードが置けるようになって実用的だし、薄型になるから運びやすいし」 と、実用性にも思いを馳せ、やがて 「どうせならオリジナル曲線デザインにして、フェラーリみたいにしたら、かっこいいぞ!」 「やっぱ、スーパーカーブームを代表する、512BBみたいな。。。いやいや388GTOみたいな。。。」 って! タシカニ。388GTO にはそっくりじゃ。
で、文章に書くと、「心臓部を鍵盤の下から後ろに変更」と、たった15文字なのですが。
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またしても。 更に、50年前のコンデンサ等の電気部品が、今も製造時そのままの性能を発揮するワケもなく、これらのパーツは全て、交換されたのです。
パッチン、パッチンってワンタッチで交換するのではありません。ひとつひとつ、ハンダを丁寧に剥がし、ひとつひとつ丁寧にハンダ付けしてゆくという、正に気が遠くなるような、根気と技術と執念が求められる作業です。
しかし、現実は。。。まだまだこれだけではないのです。どうぞ逃げ出さずにご覧ください。
ちなみに、ボクなら裸足で逃げ出します。(笑)
このシャーシを作るだけでも、とんでもない大変な事なんですが、なんだかすっかり麻痺して、フツーに写真を眺めることができます。 この人に任せておけば大丈夫。みたいな安心感。(笑) このレポートを読んでいる誰もが、その重さやデカさに思いを馳せることをすでにしなくなって、もしかしたらホームセンターとかで売っていて、サクサクって組み立たるような錯覚にさえ陥ってしまっています。(笑) そしていよいよ。このようにサクサクと“海月”が姿を現します。 前述にて、木製ケースから透明ケースに移植しているだけではないと説明しましたが、本来は鍵盤の後方下に位置する音源心臓部の巨大なユニットが、鍵盤の真後ろに移動した様子が写真でもわかると思います。 内臓されているアンプも交換され、移動しています。 内臓されているリバーブユニットは新しい物に交換され、こんな所に移動しています。 増設されたリバーブユニットは、「ガシャーン用」 です。 あれ?もしや。「それが音楽を演奏する事と何の関係があるの?」 と、呆れ顔の方。。。。 おめでとうございます!
「すげーな。ガシャーンだけの為に、リバーブユニットを2台に増設したのか!」と、呆れ顔の方。。。。
この“海月”。 見る人が見れば、製作者の創意工夫といい、深い造詣・知識といい、驚くばかりです。 そして、この“海月”の最大の魅力は。 この宇宙船のような外観の楽器から放たれるサウンドが、50年も昔に作られた楽器そのままだということです。 視線を集めるアクリル製の外観と、まさに好対照な50年前の“オルガン部分”をご覧ください。 使い込まれたツマミやレバーの風合いが、完成したばかりのこの“海月”に、すでに圧倒的なヴィンテージ楽器だけの持つ風格を与えていることは写真からも伝わっていると思います。
見た目にも時空を越えそうなデザインですが、ほんとうに50年という時間を飛び越えて、50年前の極上サウンドを奏でる。 出来上がった“海月”をご覧ください。
我々フツーの一般人(さりげなく自分もそっち側に立ちつつ)からすれば、これで完成なのですが、
そこまで考えます? ボクなら既製品の懐中電灯を投げ込んで、「ほーら光った。電池が切れたら交換してください。」ですよ。 この、ひとつひとつ丁寧に配置された高輝度LEDライトは、なんと調光機能付きです。
ステージの照明の具合や演奏する楽曲イメージに合わせて、ぼんやり光らせることも、華やかに光らせることも可能なのです。 この“海月” は、ただ光るんではないのです。 例えば。光を点滅させるリレー回路を組み込めば、バラードだろうとヘヴィロックだろうと、キャバクラのネオンのようにテッカテカ、チカチカさせることも簡単にできます。 しかし、そーゆー「俺だけ目立てば!うひゃひゃひゃ〜」っていう品のない機能は絶対に付けないのです。 どうです。 誰もがその華やかなプレイに魅せられ虜となる川村ケンさんというキーボーディストは、遂に世界一美しい“愛器”を手に入れ、その輝きは更に昇華してゆくことを感じているのはボクだけではないハズです。
ヴォイジャーさん、おつかれさまです。
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